ギャングスター ドライブ  戸梶圭太

ギャングスタードライブ (幻冬舎文庫)

ギャングスタードライブ (幻冬舎文庫)

なんだか最近本の感想ぐらいしか書くことが、ないですね!
「闇の楽園」と「溺れる魚」で惚れこんで、以来ぼーっとすごしてきたらいつの間にやら新潮以外からたくさん本が出ていてびっくりしました。戸梶さん。
これは、私の読んだ前出2作にくらべてギミックというか物語の構成自体のスケールは決して大きいものではないのだが、それにしたってスピード感と、うすっぺらいかっこよさは相変わらず! な娯楽作でした。あくまで自己中心的で頭の悪いキャラクター達が縦横無尽に己の欲望を果たさんがために突き進む、その交差がきれいな線を描くのだからたまらないですね。頭を使う必要なんて微塵もなし、キャラクターのバカさにニヤニヤして、追ってくる車にはらはらして、向けられた銃口に絶望的な気分になっていればきれいに誰かしらが、終着点に連れて行ってくれる。
言ってしまえば、漫画みたいな作品ですね。
暗くない「鮫肌男と桃尻女」ってかんじもちょっとした。あれは漫画が好きですよ! たまらなくすき。あの、絶望的で湿っていて、とてつもなくいやらしくて、だけど硬質なにおいのするかんじが、たまらない!(映画は正直よくおぼえていない)

この人のような、「構造美」(それは得てして「美」ではないのかもしれないが)を基調にして物を描く作家が私は大好きで、言ってしまえば三島由紀夫などもそういった作家の一人ではないのかと思うのです。「午後の曳航」、最高よ。