「火の粉」雫井脩介

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)

へーこの人「しずくい」って読むんだ。
お風呂で読了いたしました。面白かった。読んでいる最中は「うーわー貫井徳郎の『慟哭』再来か!!」と興奮したものでしたが、読後感はちょっと及ばないなあ。それでも十分面白かった。怖い。ひたすら怖い。
以下、決定的にネタをばらすことはしませんが、軽くネタバレにつき。
サスペンスミステリとでもいうんですか、にありがちな犯人が誰だかわからない、つまり誰を敵として扱っていいのかわからないモノ。読んでりゃ大体わかりますが。
主役の家族が入れ替わり立ち代り主人公になって物語を進めていくようなつくりも、ありがちながら面白かった。いや、まあこの手の作りはどうも上記貫井氏の「プリズム」を彷彿とさせて多少なりともいやな予感がするものですが。だって、あれ、もう、ある意味トラウマよ! あれ読んだ後の金かえせ感ったらなかったわ! それでも「慟哭」のあの感動が忘れられずに駄作きわまる貫井作品を追いかけてしまうの。いつか、またあの感動に出会えればいい。
さて、話を戻しましょう。
私は正直、主人公の家族の中で(幼児を除けば)一人だけ主観での文章がなかった(あったのかもしれない!)人がそうだったらこれはもう、最高ね! と思っていたのですがそこまでは・・・・・。でございました。まぁいいけど。帯の「ラストまで二転三転」云々に騙されすぎた。
なぞを解いていって、主役がそれぞれ恐怖におののきはじめ、そうして動き出すところまでは怖くて怖くてどきどきして、ものすごく面白かったんだけれども、クライマックスからラストまでが、なぁ。ああいう、篠田節子的な(「贋作師」だったり「妖櫻記」だったり「神鳥-イビス-」だったり)いきなりハードボイルドなクライマックスを持ってきてしまうと、どうも今まで積み上げてきたものが瓦解していってしまうような印象を受けます。そしてあの、びっみょーな結末が、どうもなぁ。
総評としては相当好きな部類に入るし、人にもお薦めしたい本なので構わないのですが!